ここ何年か、ソニーはこれが最後これが最後と言い続けては、何度も巨額赤字を計上してきていて、再建が進んでいるようには全く見えない。
ここまでのところ、ソニーが再建のためにやってきたことは、不採算事業の切り離しと、含み益を持った資産の洗い替えによる遊休資産の現金化である。
これは、リストラ策としては基本的な手法で、現実にこの手段によって再生した企業は多くある。
しかしソニーは再生できなかった。それはなぜか。
これには2つの理由があると思われる。
1つめ。
本当の意味でソニーの全資産を見通せる人がいなかったこと。
これは、日産のゴーン氏を想定するとわかりやすい。一時は経営危機とまで言われた日産を、ごく短期間で建て直したゴーン氏の手法は、単純に一度ガラガラポンで社内の負債を徹底的に出したらどうなるのかということを、実行したというだけのこと。
しかし、実際に負債あるいは資産となってるものを、マイナス/プラスと計上することは簡単でも、何が隠れ負債あるいは今後負債となり得るもので、逆に何が資産となって今後利益に寄与するかを見極めるのは、難しい。
ゴーン氏の非凡なところは、その見極めをやりきって、隠れ負債に引当金を充てることも含めて、単年度の負債として全部を出し切ったところだ。今後発生するものも含めて負債は全部出てるので、あとはどれだけ利益を多く積むかの勝負だけとなる。
ソニーの場合、そういう将来的な事業像まで含めて見通しを立てられる人もいなければ、徹底的に膿を出し切るだけの政治力を持った社長も近年はいなかった。
社内政治に翻弄されながら、なんとか赤字を出し切って、さあ次年度だと思ったら、別のところから赤字が噴出する。それを切り離したら、また別が、と次々と出てくる傷に右往左往させられてるだけだ。
当初はあったはずの内部留保で、日立のように早めに大規模に手当てしておけばよかったというのも、今になればわかるが、もう小刻みの傷止めに消耗してしまって、今となっては大規模な構造改革をする資本余力すらない。
2つめ。
ソニーはもはや、電機・電子機器のソニーではないということ。
いま安定的に収益を上げているのは、映画・音楽といったコンテンツ部門、メディカル機器部門、そして金融部門である。
テレビ、パソコンといった往年の稼ぎ頭はすでに負け組として社外へ切り離されてるし、半導体やイメージングも激しい国際競争で安定的に収益を上げられてはいない。結果的にソニーが思い切った改革に着手するのを遅らせてしまうあだ花となったゲーム事業も、今はX-BOXの後を追うのが精いっぱいで、最近やっとキャッチアップできてきたか?というところ。
ソニーが、いわゆる「ソニー」であることにこだわっている間は、こういう不採算部門を抱え込み続けないといけない。
逆に言うと、こういう部門を手放して、全く関連性のないいくつかの事業体からなる、複合コングロマリットとなれば、ソニーは今の段階でも、比較的容易に黒字化が可能だろう。
要するに、いまのソニーにはコア事業がない。
何とかコア事業を作ろうと、液晶テレビに力を入れてみたり、スマホに力を入れてみたりしては、それがさらなる損失を招いてきたのが、ここ数年の苦闘の結果だ。
日産もそうだし、往年のバンク・オブ・アメリカもそうだったように、奇跡の復活劇を遂げるには、最終的に注力すべきコア事業は必須だ。ここだけ守りきれば細々とでも利益は出るし、十分に利益が出たらまた元のように展開できる。そういうコアがなければ、リストラするにも方向性が定まるはずもない。
いまのソニーでは、採算部門だけになれば、もう元のエレクトロニクス・メーカーに戻る道はなくなり、なんとかエレクトロニクス・メーカーとしての看板を維持し続けるには、飽きられない程度にスパイダーマンの映画を乱発したり、低廉な手数料で自動車保険や住宅ローンをバンバン売って、看板の重みを支えるしかない。
こういう、単純な2つの要因が、こんなに企業の再建を難しくしてることに、驚嘆する思いだが、そういう複雑な状況を、少なくともいまの平井社長に取りさばくことはできないだろう。
ソニーはあいにく、過去には非常に財務体質が良かったので、銀行とのつきあいも、おそらくそれほど深くはあるまい。
抜本的な再建策を考えられる人材が、社内にも社外にもいないから、ことここに至ってしまってるとも言える。
また何年かたって、この日記を見直して、あそこがソニーの底だったなと思えるなら、それはめでたしめでたしの展開だと思う。でも、このままだと、黒字部門でなんとかカバーできる程度の赤字しか出さないようなチャレンジしかできない、縮小均衡企業になっていく道しかなさそうで、それが心配だ。