会社というもの

公開されてから、あっという間にあっちこっちで話題になってるので、どさくさ紛れに尻馬に乗って書いてしまうけど、「消滅会社 AppBankGAMESを終えて・ゲーム作りで大事なこと(hotmiyacchiの日記)」について。

内容については、長いんだけどとりあえず、わざわざ出資して始めた上場して大儲けとなるはずだった会社が一人のとんでもないやつを抱え込んだがために大混乱のまま手を引かざるを得なくなり大儲けし損ないました、という話。
で、この内容が100%真実だったとして、じゃあ問題はどこにあったのかと考えてみると、書いてる人自身も自分の責任を感じてるし、実際責任も取ったし、自分の責任を逃れようとはしてないんだけど、それでもやっぱりこの人は、問題の人物のせいだと思ってるんだろうと思う。だからこそ、これを書いたんだろうし。
でも個人的意見としては、90%くらいこの人の問題なんだと思った。

そもそも、この内容のごく一部として、会社をやっていくのに大事なこととして評価システムをきちんと作らないといけないことが理解できた、みたいな話が書かれてるんだけど、いやいやそれは最初に考えておかないといけないことだよ?という問題点。
この人がやりたかったのは、どうもプロジェクト・マネジメントだったみたいで、それと会社の経営と、出資者とが、自分の中で分けられてなかったことが、まず問題の起点になってるっぽい。すごいゲームを作ってちゃんと課金できてパズドラみたいにしたい!っていうのは、プロジェクト・マネジメント視点では大事なことなんだろうけど、会社をやっていくってそういうことじゃない。

資本主義というのは、時間とお金を交換するという作業を、延々やってるようなもので、たとえばリンゴ1個の値段も、それを作るに至った生産者のかけた時間を、1個あたりに直した金額と言える。生産者は生産者で、たとえば肥料を買うとなるとその肥料の時間コストを払ってたりする。
逆にお金をたくさん持ってると、工場を作って、人ひとりでは何十万年かかってもとても作れないようなものを作って、それを売ることで利益が得られる。
だから、会社経営というのは、時間をお金に換算するシステムをきちんと運営することが一番の目的ということになる。

当然そこには、社員の業務とその対価のシステムをきちんと作ることも含まれるし、逆に損失を与えた場合の機会費用をどの程度処罰に反映させるかということを決めることも含まれる。
今回の場合、この人は実績が上がってないことを経費としてどの程度計上するかということの基準がなかったので、当該人物を会社から追放することもできず、またそのために他の役員を説得することもできなかったわけだし、業務と対価のシステムがきちんとしてなかったのでスケジュールに対してどれくらい進捗してないとまずいのかが測れてなくて(あるいは力技でやるつもりで測ろうともしなくて)、土壇場でなんとかしないといけなくなったり、四半期報告が出せなくなったりしたわけであり。

ただ、こういうのって、成果ありきの日本のIT業界だと、けっこういっぱい転がってる話で、特にゲームとかはいろんなところが絡んで体力勝負で成功してたりするので、どうしても甘くなりがちというか、認識が深まってないところはあって、この人がそういう業界にいて、きちんと経営してないけどうまくいってる人たちを見て、あれでいいと思ってたとしても、ある意味仕方ない部分はあるのかなとも思う。
日本のIT業界は、ITなのになぜか労働集約型産業っぽいところが大きくて、だから海外みたいに小規模で利益率の高いIT企業が出てこない(結局は、規模を拡大しないといけない)ことの原因にもなってる。

そういう意味では、これはけっこう参考になる問題がいくつも含まれてる、重要な話でもあるので、これを公開したことは素晴らしいとも言える。
でも、ほとんどのこれを読む人はきっと「なんだよ、Iとかいうやつとんでもないなー。おれもこんなやつに絡まれないよう気をつけないと」という感想で終わっていって、また同じようなことが繰り返されて、別のIが糾弾されるだけのことのような気がする。

最近は、大手企業でアメリカ型のコーポレート・ガバナンスを導入するところが増えてきて、執行役員制とか社外取締役とか広がってるんだけど、どうしてそうなってるのかの認識は、結局のところ社会にはぜんぜん広がってないんだろうね。
経営者とプロジェクト・マネージャが一体だと、負け勝負に社内リソース全部突っ込んでてもどうしようもないのに。

そういう意味で、この人は問題の収拾のために自分が責任を取る形で経営権を手放したと思ってるようですが、実際には親会社の経営陣のほうにしてみれば、こいつは会社を運営していく能力はないので任せてはおけない、単純な出資者の地位にするかプロジェクト・マネジメント担当者にするかしなくては、と思ったから出資分を引き取ったのであって、責任云々はもちろんあるだろうけど、そこには経営判断があったと見るほうが正しいんじゃないかなと思う。

自分もひどい目に遭ったことがあるのでわかるが、経営がどういうものかわかってない社長だと、従業員はけっこう振り回されてえらい目に遭う。
ひどいやつに会社をつぶされた経営者は、安定した組織を作れなかった自分の経営能力を最も恨むべきだと思う。

10月24日追記:

その後、当時中にいた人からの情報が出たんだけど、想像以上にひどい社長だったようで、少なくとも従業員の目から見ると、問題とされてる人物よりこの社長のほうが問題があったっぽくて、やっぱりねという感じ。
当然、自分が暴露したつもりが暴露し返されて黙ってられないので、またこれに反論してるんだけど、それが反論になってないあたり、どちらに真実があったかは推して知るべしという状況で、まあこれを読んだだけでも、この人を何か重要な局面でヘルプに呼ぶのはやめておこうというのが共通認識になったんじゃないかなと。

 


Author: talo

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