フランス大統領選挙は、中道のマクロン候補が当選となった。
多くの報道では、これでイギリスのEU離脱やアメリカ大統領選挙でのトランプ当選という、排外主義の流れが、いったん止まったという論評がなされていた。
では、世界政治は単に混迷を深めただけなのか。多くの国で社会・経済体制に共通点を持つ先進各国での、今後の世相の流れのようなものは今回の選挙では示されなかったのか。これについては、明確な問題意識を持った報道はあまりなかったように思う。
しかし実際には、今回の選挙で示された世界の流れはあった。それは経済的な再分配の問題だろう。
日本ではイギリスのEU離脱も、トランプ大統領当選も、移民との問題で取り上げられることが多く、マクロン候補の政策もEU維持の面から移民にも融和的ということが主に取り上げられていた。しかし実際には、イギリスではEU離脱によってより低廉で充実した社会保障が国民に行き渡るとしたEU離脱派が勝利し、アメリカではより多くの雇用と経済活動の活性化を主張したトランプ氏が勝利し、フランスでは法人税の低減と政府の民間への関与の低下による経済の再浮上を主張したマクロン氏が勝利したという面のほうが、より選挙民には意識されていた。
先進各国の経済では、第二次大戦を経て発言力を増した労働者階層への経済的利益の分配の流れが、冷戦下の社会の安定の必要から継続していた。それが一通り行き渡ったところで、多くの労働者は不動産や株などを保有する中産階級となり、失うものができた結果、各国の政権は保守勢力の復活と社会民主主義の見直しという状況も見られる環境下で、冷戦終結を迎えた。
冷戦後の世界では、共産圏の経済開放と、第三世界の経済成長によって、経済規模が大きく拡がることとなった。これは、それまで冷戦下の穏健な経済の中で中産階級という枠の中、あまり差の見えなくなっていた、持てる者と持たざる者の差が、再びその投資効率の差によって明らかになる社会であり、また第三世界出身者が経済活動に参入することで、新たな持たざる層が出現したことでもある。
現状の世界の経済格差、再分配が再度問題になるに至ったのが、現下の状況であり、それを反映したのが去年から今年の大きな選挙の結果と言えるだろう。
過去には世界はこの再分配問題を、戦争とその後の社会変革によって克服してきた。そういう大きな機会がない限り、出来上がったシステムを変えることは難しいためだ。
その意味では、現状世界が不安定化し、局地的とは言え戦争やその危険が絶えないのは、たまたまではない。
しかし、先進各国では、いますぐに戦争によってこれを解決しようという考えは、当然に排除されている。その状況下で、少しでも再分配の可能性の高まる方向、経済的な利益を得る機会がより平均化される方向へ、選挙の結果が向き続けているのが、現在の世界の流れというのが、マクロン氏当選の意味ではないだろうか。