トランプ大統領が誕生して10日ほど。徐々にその性質が明らかになってきている。
全体としての印象は、自分の考えに迷いのない、素直で幼稚な大統領という感じだ。
自分の信じていることは事実で、それを口にも出すし、政策として実行もする。そういう姿勢で、就任初日から実行力をアピールしている。
結果として、選挙期間中の放言や暴言も、選挙対策でも何でもなく、彼の信じるところそのままだったということも、明らかになってきた。
これまでトランプ氏の発言については、「あれは彼なりの深謀があっての発言。真意は別のところにあり、実際には別の結果を目指している」という解釈が多かったように思う。評論家なども、彼はビジネスマンなので、最初に大きく自己主張を出しておいて、裏で細かく調整して、最後にはきれいに妥結するというやり方だろうという予測をしていたので、大統領就任による経済の活性化を期待して、株価なども就任を前にずいぶん上がっていた。
しかし実際はそうではなかった。深謀もなければ、調整もなく、自己主張を前面に出して、政策を実行していく。
しかも、そういう彼の政策の基になる事実認識というのは、彼の顧問が以前に運営していた、保守系ニュースサイトと言えば聞こえはいいものの結局ネット上の極端なデマに近い愛国主義的なニュースをろくに取材もせずに聞き書きで集めているだけのサイトや、友人であるすでに引退した経営者の思い込みからの雑談などに基づいている。
「アメリカ人の雇用は生産が海外に移ったので奪われた」「アメリカは日本や中国にもうけさせてばかりいる」というような、愚痴を真に受けて、政策を転換しようとしているわけである。
ところが実態の経済はそうではないので、トランプ流の改革がどの程度将来の果実となるかは、先行きが不透明となってきた。
そもそも今のアメリカは完全雇用に近い状態なので、雇用の創出はそれほど必要ではない。過去の工業地帯で工場の閉鎖が相次いでいるのは、すでにアメリカ国内では利益を出すことも人件費を払うことも難しいからであって、これを維持したとしても、最低賃金ぎりぎりの雇用か、完全自動化のラインへの置き換えであって、過去にこの地域で供給されていたような、9時から5時までラインのそばにいれば家も車も買えるし十分な年金ももらえるというような職は帰っては来ない。
アメリカでの生産は、当然高コスト化をもたらすし、日本や中国からの輸入への課税もまた同じ結果となって、物価高となる。しかしアメリカ人の職能が高レベルに移動していくわけではないので、結果として貧困は拡大する。違法な低賃金での労働力である不法入国・滞在者の制限も、高コスト化・物価高・貧困や格差拡大という方向では同じ結果だろう。
目先のところでは、おそらく彼を支持した選挙民は、テロとの闘いや、海外移民などのマイノリティの抑圧に期待の重点があるため、これについてはお互いの利害は一致し、不支持率は高いものの、ある程度の支持を得て政策を実行することは可能だろうと思う。
しかし、経済の減速が明らかになってきた時点で、現実に目が向けられ、早ければ2年後の中間選挙で民主党が議会で多数を握ることで、大統領令をはじめとする政策が覆されレームダック状態となっていく可能性がある。この景気の減速は、遅くとも次の大統領改選までには顕在化すると思われるので、その時点でも熱狂的な排外主義者たちがトランプ支持で結集できるかどうか。またそれまでに、トランプ大統領が何らかの政策的な転換を行うような柔軟性を見せられるかどうかというのが、今後の焦点ということになるだろうか。