今年のアカデミー賞作品賞受賞作。
麻薬売買の現場で、全員が殺しあったあと、残された金を手に入れた男が、殺人マシンとも言うべき男に追われる。
話としては、それほど話らしい話もなく、展開していく。
しかし、それほどのことがなくても、映像から滲み出す緊迫感のようなものがすごい。「キルビル」が、人の死んでいくシーンを究極に娯楽化した作品だとすると、こちらは逆に死というものを究極に現実化した作品という感じ。しかも、それが主題ではない。
作品のテーマについては、狂言回しの形で出てくる保安官が話すが、これがアカデミー賞をはじめとして、高く評価された背景として、アメリカに現実に蔓延している「虚無感」のようなものをテーマとし、的確に表現しているからだろう。
この国がどうなっていくのか分からない、常識というものが通じないという、国全体の雰囲気を、この映画の中に凝縮し、最後に近いシーンで、それがさらに「選択されて」そうなっていっているということを突きつけた、このテーマと雰囲気の見事なまでの合致が、素晴らしいのだと思う。
この映画を見ると、「CHANGE」をスローガンに掲げる、民主党大統領候補オバマ氏の快進撃が、単なるブームではなく「何とかしてほしい」という、アメリカ全体の気持ちが後押ししているのだと、理解できる。
パワーにあふれ、世界のリーダーとして君臨するアメリカの内実を、的確に見せてくれる作品。
5.8点