有権者を見ていない立憲民主党

岸田内閣発足後の総選挙が終了した。
結果は自民党は多少減らしたものの、ほぼ前回並みで勝利と言っていい議席数となった一方、政権交代を訴えて共闘した立憲民主党と共産党は、そろって議席を減らした。

特に立憲民主党は、野党共闘で自民党現職に対して逆転圏内に入った選挙区も多いと見られていただけに、逆に大幅に減らしたことには、予想外の苦戦と報じる内容も多かった。
しかし、実際には立憲民主党がおそらく政権交代というところまで詰め寄ることは難しいであろうことは、すでに公約を発表した段階から見えていた。

立憲民主党は今回の選挙に対して、ターゲットとしている有権者の多くが、コロナ禍で生活や将来の見通しが暗く、現状に不満があるという前提で公約を作成し、富裕層・大企業優遇を改めて国民の暮らしを守るということを主軸に掲げていた。
しかし、現実には多くの世論調査で、コロナ禍で生活が苦しくなったという人が2~3割だったのに対し、変わらないという人は5割前後と、生活環境が悪化している人は一部にすぎない。当然、多くの大企業のサラリーマンは生活を保障され、大企業への不満は少ない。
多くの有権者はコロナ禍でも生活はできていたし、そこを大きく改善してほしいポイントとは思っていなかったということになる。

一部の影響の大きかった人や業態については、やはり報道等で見えやすいし、救済を求める声も大きかった。しかし、現実には2割しかいないところをターゲットにして、立憲民主党、共産党、れいわ新選組が票を奪い合い、あるいは分配しあっていて、与野党伯仲的な状況を作ることは難しいのが当然だろう。

そして、選挙戦終盤で問題になった、立憲民主党江田氏のNISA増税発言。
これ自体は、誤解よるものだったとしても、立憲民主党内でNISAというものの重要性に対して、ある程度の認識があれば、このような発言は出なかったはずなので、ここにもターゲットとしているサラリーマン層への理解の不足が現れている。
すでに年金だけでは老後の生活は厳しいと言われて数十年。ほとんどのサラリーマンはNISAなどを入り口に、その金融資産のある程度の部分を、投資商品で保有していることはほぼ間違いない。いまのサラリーマンは、単純に搾取される労働者ではなく、労働者であり投資家でもある中産階級となっている。
そういう現実を見ずに、金融資産への課税強化や総合課税化を訴えても、サラリーマン層にしてみれば、虎の子の老後資金への不安感しかない。富裕層に比べて、金融資産が少ないだけに、逆にその維持には敏感になる可能性もある。

このように、立憲民主党にはターゲットとしている有権者がどのような人たちなのか、よく見えないまま選挙戦に突入し、的外れな政策を訴えていたことが、今回の結果となって現れている。
今後は来夏の参院選に向けて立て直しができるかどうかが焦点となるが、立憲民主党は2020年の再結党時にもその名称を引き継いだように、首脳部ではイデオロギー政党的な政策の方向性が強い。イデオロギーに拘束されて現実と乖離していくと、見えてくるのは社民党のような凋落でしかない。これを理解して、より現実的な改革を提案して、自民党政権からの交替の選択肢となり得るか。今回の選挙結果を冷静に分析して活かせるかどうかにかかっている。


Author: talo

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