ジェブ・ブッシュの撤退

2月20日に行われた、2016年アメリカ大統領選挙の民主・共和各党の候補者選挙3州目は、候補者の絞り込みに向けて、象徴的なものとなったと思う。
民主党では、ここで敗れると本命としての地位が危うくなると言われていた、ヒラリー・クリントンが僅差で勝利し、逆にやはりヒラリーかという心証を強めることに成功した。
一方の共和党では、事前の下馬評では長く本命候補扱いだったジェブ・ブッシュが3位のクルーズの1/3程度しか獲得できず、結果としては3州での獲得代議員数4人という惨敗で、予備選挙からの撤退を表明した。

多くの候補から、「アメリカ大統領の職はクリントン家やブッシュ家の世襲の座ではない」と批判を浴びてきた両候補ながら、ここまではっきりと明暗が分かれたのは、やはりアメリカ国民が持つ「クリントン」と「ブッシュ」へのイメージというものも大きかったのではないだろうか。

「クリントン」へのイメージは、総じて良いもののほうが多いだろう。
ビル・クリントンは前大統領ブッシュ(父)の時代に後退しかかっていた景気をはっきりと反転させることに成功した上、いわゆるレーガノミクスで大きくなっていた財政赤字を在任中に完済。強いドル政策の下、海外からの投資も積極的に呼び込んで、双子の赤字と言われアメリカの経済体質の根幹とされていた問題の解消に成功している。
好景気と平和の時代の大統領というイメージは強く、いまだにその人気は健在である。

一方「ブッシュ」。
レーガン大統領の副大統領から次の大統領となった父は、民主党はもはや政権批判を通して共和党を補完する党でしかないとまで言われた共和党全盛期に就任しながら、結果として湾岸戦争を防げなかったことや、その後の経済収縮を止められなかったことなどから、共和党の退潮を招き、アメリカ自体の地盤沈下ももたらし、2期目の選挙ではクリントンに敗北して退任した。
そのクリントン後の選挙で、兄のブッシュが共和党の大統領候補として、民主党候補のアル・ゴアと競ったが、その当選はフロリダの疑問票を未解決のまま、しかも全体の得票数では敗北しながら選挙人数で勝利したという、問題の多い当選だった。そしてその任期中に911のテロが発生。多くの事前情報がありながらこれを防げず、また未確定情報を元にイラク戦争へと突き進み多くの兵士を犠牲にした。さらに対テロ戦争への国民の愛国心の高まりをてこに2期目も獲得したが、ハリケーン・カトリーナへの対応の遅れや、リーマンショックの発生から、任期中に史上最低の支持率を記録している。

多くのアメリカ国民が、「クリントン」によいイメージを持ち「ブッシュ」に悪いイメージを持っていることは、これらの状況から明確だろう。

そして結果的に、ヒラリー・クリントンは、上院議員と国務長官という政治経歴の浅さや、国務長官時代の不適切な私用メールという問題を常に攻撃されながらも、本命候補として残り続けている。
ところがジェブ・ブッシュは、イラク戦争の総括ができていなかったという、自分自身とは関係のない問題でのつまづきをひきずったまま、候補者としての座を去るに至った。

それぞれ本人には、それなりの言い訳もあれば、努力もあるだろうが、やはり大統領選挙というのは巨大なマーケティング活動であり、それを承知しているからこそ、ヒラリー・クリントンはすでに老齢の夫を選挙戦に連れ回し、ジェブ・ブッシュは瀬戸際に追い込まれるまで家族とは距離を置き続けたのだろう。

今後のヒラリー・クリントンの活動で、「クリントン」へのイメージがどのように変わっていくのかも、注目すべきところになってくるのかもしれない。


Author: talo

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