マイナス金利と円高

日銀のマイナス金利導入とともに、急速な円高局面となっている。
市場ではこれは、中国発の世界景気減速に対してリスク回避の動きが強まっていることを、その原因と解釈しているようだ。

しかし、世界経済の減速は昨年中頃より鮮明になってきていて、それは上海株暴落や原油安などで現れてきていた。その流れがいよいよ確実になってきたタイミングで、折悪しく日銀がマイナス金利を導入したということだろうから、やはりマイナス金利と円高の間には、たまたまではなく、きっかけとなるような理由があったと見るほうが正しいと思う。

これは非常に単純に説明できるのだが、市場が黒田日銀総裁の誕生とともに急速な円安となったのは、黒田総裁が以前より、市場には日銀が買うことができる資産がまだまだ豊富にあって、それを買い続けていけばデフレは収まると広言し、実際就任とともに大規模な国債、ETF、REITなどの買い入れに動いたためだ。
「黒田バズーカ」と言われた、この二度の大規模金融緩和で、日銀が大量に円を刷っては市場に流し込み続けると鮮明にアピールし、実行したからこそ、円の価値が下がり、円安となった。

しかし、今回のマイナス金利は、同じ金融緩和でも大きく意味合いが違う。
こっちにある円をあっちへ移す。それだけのことだ。
確かに、日銀内に埋蔵されている円を市場に出すということでは、意味もあるだろうし、金融緩和ではある。しかし、総量としての円の多さは変わらない。すなわち、円の価値を今までより下げるものではない。考えようによっては、いままで金利として供給されてきた分の円の供給を、抑えるということですらある。

そしてこの緩和策は、すでに日銀の国債買い入れで市場での国債流通が逼迫してきた環境下で、次に日銀が行う資産買い入れは何か?と固唾をのんで見守っていた関係者からしてみると、もう買い入れできるものはなくなりましたという、手詰まり宣言とも受け取れた。
あれほど、買い入れできる資産はいくらでもあると言い、無限に円を刷り続けるかのように言っていた日銀が、もうその手段は取れないとなると、円は今が最安値ということも同然だ。
最安値1ドル125円という価格には、これから先も円の流通拡大が続けられるという想定も含んだ価格だった。しかし、もうこれ以上は円は出てこないとなると、そういう想定も含めて巻き戻さないといけない。一挙に円高になるのは当然だ。

さらに、円の価格は指標メインの対ドルでは、日本国債と米国債との金利差で決まる。
アメリカが昨年末についにゼロ金利からの脱却を果たした時点では、ここからドル高局面となるので、相対的には円安になりやすいと思われていた。ところが、この決定以降、発表されるアメリカの各種経済指標は、景気の足踏みあるいは後退を示すものがたて続き、FRB関係者の発言も弱気となっていった。当然、今後のアメリカの金利上昇ペースは、想定よりも遅くなる。
おそらく日銀のマイナス金利導入は、これに対して先手を打って、アメリカの金利が上がらないなら、日本はもっと金利を下げるよという姿勢を打ち出したつもりだったのだろう。しかし現実には、アメリカの金利は上昇しない。日銀は円をこれ以上刷らない。という、円高/ドル安環境を歩調を合わせて作ってしまったに等しい状況にあった。
これでは、円高にならないほうがおかしい。

世界景気減速という環境で、日銀ができることはたかが知れている。そういう意味では、日銀には気の毒な結果だったかもしれない。
しかし、インフレのためには円を大量に増刷し続けるしかないという、原則が確認できたという意味では、意義深い円高でもある。
黒田総裁は、もっと円を市場にばらまいて、日本円は信用ならないという状況を作る方策を検討すべきだろう。


Author: talo

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