フィギュアスケートのソチオリンピック代表で、男子シングルに羽生、町田に加えて高橋が選出されたことについて「逆転で」という表現を使った報道がいくつか見られた。
確かに、全日本5位という位置で、また事前の選考3条件では同じレベルだった小塚が全日本3位だったことを考えると、逆転と言えなくはない。しかし、それをもって「わかりにくい」「なぜこうなったか」という議論を掲げるのは、単純化しすぎた話のように思う。
そもそも、フィギュアスケート男女シングルのソチオリンピック代表選考は、簡単に言うと、全日本選手権出場を基本条件に、以下の3つだった。
1.全日本優勝
2.全日本2位、3位と、グランプリ・ファイナル日本人最上位
3.世界ランキング上位
この条件で、まず1.で羽生が決定。2.ではまずグランプリ・ファイナル最上位の羽生がすでに抜けたので、全日本2位の町田が決定。そして3.で世界ランキングという話になると、日本人では1位が羽生、3位に高橋、5位に町田が入って、昨シーズンから不調の続いていた小塚はなんと17位にしか入ってない。これは高橋となるしかないだろう。
もちろん、「逆転」というイメージを与えないために、スケート連盟はもっと自動的に代表が決まるような選考基準を作ることは可能だっただろうと思う(たとえば、全日本とグランプリ・シリーズをポイント化するなど)。
しかし、そうはしたくなかった。なぜかというと、これはもう「世界ランキング」と持ち出した時から明白だったのだが、要するに是が非でも高橋と浅田を代表に入れたい。そしてできれば安藤は入れたくない。そのために、批判を承知で、こういうややあいまいな選考基準を設定したことは、容易に想像できる。
シーズン開始前の段階で、高橋と浅田がどの程度の調子で序盤戦に臨むかはわからない。さらに、従来であれば、浅田も高橋も不調でも全日本で3位以内に入っただろうから、本来なら全日本とグランプリ・ファイナルを条件としておけば良かった。
ところが、男子においては、従来の高橋・織田・小塚の3強から、高橋・羽生・小塚の3強へと移ったとは言え、一昨年までならこの3人を選ぶのにそんなにいろいろ条件を付ける必要はなかった。ところが、昨年からここに無良、町田が加わり、さらに織田も復活してきたため、そう簡単にはいかないという事態に直面していた。うっかりすると、全日本では無良・町田・織田の表彰台となっている可能性も排除できなかったのだ。
そうすると、何かしら高橋が代表入りする仕掛けが必要となる。それが世界ランキングだったというだけだ。
さらに、この世界ランキングを判断材料とすることで、昨季まで活動のなかった女子の安藤が、全日本で好成績をおさめても、代表入りさせない理由とすることができる。
スケート連盟としては、一石二鳥のこの選考方法しかなかったと言えるだろう。
結果的にあおりを食って代表から漏れた小塚は気の毒だが、この高橋救済システムではどうしても誰かが高橋の代わりに泣かざるを得ないことは、最初からわかっていたことで、グランプリ・シリーズでも全日本でも、条件的にそれを覆せる成績を出せなかったという点で、やはり脱落してしかるべきだったとも言えると思う。
そういう意味で、今回の選考は逆転でもなんでもなく、順当に代表が決まったが、外観的には、全日本の男女上位3人の中で小塚のみが選ばれなかったという、謎の結果に見えるようになってしまったというだけのことだ。