いつか眠りにつく前に

 死を目前にした老女は、過去の自分の生き方を省みながら、娘たちに最後の自分の気持ちを伝えようとする。そこには、遠い昔のまだ若かった自分の、蹉跌への思いがあった。

 昔なら、NHKの朝の連続テレビ小説でよくやっていた、女の一生ものの、ダイジェスト版のような感じ。
 60年代ファッションと、朝鮮戦争とベトナム戦争の間でアメリカが自信に満ちていた時代を背景に、友人の結婚式での出会いと別れ、そしてそれがその後の人生に与える影響と、さらに娘たちのこれからへの教訓が、綾織りのようなストーリーとして展開されていく。

 おそらく、アメリカ人であれば「そうそう、こういう時代もあった」と、ストーリーはともかく、深く感情移入できるところだろう。また、ややアッパークラスの生活が描かれているところは、昔見たアメリカのドラマを思い起こさせて、日本人が想像していた「アメリカの暮らし」に近いので、そういう面では日本人の高齢者も(話の内容と相俟って)感情移入しやすいかもしれない。
 しかし、そういう部分を除いて見てみると、思いのほか薄っぺらな話しか残らない。
 老女の若い頃の経験と過ちは、通俗的な話に終わっていて、さらにそれが彼女のその後の人生に与えた影響はわかるものの、どうして「人生に過ちなんてない」という教訓となって、娘に伝わっていくのかが、わかりにくい。
 娘時代の「事件」に焦点をあてすぎていたがために、わかりにくくなっているのと、狂言回しに余計な人物(老女の空想によるドレスを着た夜間看護婦)を登場させているので、リアリティが薄くなっている。
 最後の料理のシーンにこそ、「過ちなんてない」と娘に言えることにつながっていそうだっただけに、友人の結婚式前後にほぼ全ての時間が費やされてしまったことは残念。

 美しい映像と、落ち着いた色調は、気持ちを落ち着かせる効果はあり、話も後味の悪いものではないので、ゆったりした気分になりたいときに好適かも。

4.6点


Author: talo

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